2017年9月2日土曜日

台湾蝶採集記2017

 今夏、二年生虫班員三人で台湾へ人生初の海外採集に行ってまいりましたので、その始終を報告させていただきます!タイトルの通りメインはちょうちょです。


・1日目
 GWの北海道遠征以来三か月ぶりの成田空港を発ち、地味にしんどい三時間半のフライトを経て台北・桃園空港へ着いたのは現地時間16時。空港のお姉さんがいかにもな台湾美人でした。空港から出た瞬間、手で押せそうなくらい重い温風が体を包みます。
 今回の宿泊先は台湾のちょうど真ん中あたりの山中の昆虫館。車で空港から二時間半ほどの距離でした。

車窓から臨む台北の街並み。発展著しい台湾に日本が抜かれる日も近いか?

 昆虫館に着いたのは18時半ごろ。館長さんにお土産の煙草を渡し、部屋に荷物を置きます。

部屋の様子。意外と広い一人部屋。毎夜大量の蟻とベッド争奪戦を繰り広げた。

 館長さんが晩御飯をおごってくれるとのことで、車で10分ほどの近くの町へ。ローカルなお店で牛肉麺をいただきました。
イイ雰囲気
牛肉麺。奥に見えるのは山盛りの水餃子。

 台湾に行かれた方は分かると思いますが、台湾の味付けは日本人にもなじみやすく、とっても美味しいです。また物価も日本よりだいぶ安く、普通の町中の飲食店では大体の一人前のメニューが300円やそこらでいただけます。
 宿に帰ると、館長さんが点けてくれていた昆虫館前の水銀灯をさっそくチェックしに行きました。すごい虫はなかなかいませんが各種蛾やクワガタの♀などがいました。

宿前の水銀灯。すぐ脇の街道を深夜もトラックがかっ飛ばしていく。
たくさん来ていた蛾。ルリモンホソバだろう。黒紋は光が当たるとメタリックブルーに輝く。
こちらもたくさん来ていた。オキナワルリチラシの台湾亜種だそう。
ルリオビクチバの仲間。
キマエコノハ。後翅はアケビコノハのような鮮やかな黄色に黒紋。
昆虫館入り口のすぐ近くでとれたクロツヤムシ。でけぇ!

 23時半まで水銀灯を見てから部屋に戻り、なんやかんやありこの日はかなり遅めの就寝になりました。いよいよ明日から本格的な採集です!実は怠惰のあまりちゃんと事前勉強してないのですが、さて何が採れるんでしょうか?


・2日目
 7時に起きる...つもりだったのですが1時間の時差をすっかり忘れていて日本時間7時(現地時間6時)に起床。出発まで時間があるので昆虫館前の館長の畑を散策します。畑には各種蝶の食草や花も植えてあり、多くのマダラチョウやアゲハの仲間などが見られました。数は多くないですがツマベニチョウまで飛んでました。

畑の様子。写真のタイワンモンキアゲハは台湾で最も多くみられたアゲハと思う。 
道端にドラゴンフルーツが落ちている朝の風景

 全員の準備ができたら荷物を車に積み込み8時に出発。車は三菱・デリカスペースギア。この車のアウトドア性能がこれから五日間いかんなく発揮されます。途中お店によって朝食を食べ、お弁当を調達し今日の採集地へ。
 途中信じられないくらいボッコボコの長い山道を経て、9時ごろに標高高めの今回の目的地へ到着。天気は快晴、気温は31℃。美白を気にしない筆者でも日焼け止めが欠かせません。

こんな感じの林道

 林道沿いにガイドさんが腐らせたパイナップルを仕掛けてくれるのでそれも見ながら林道を歩きます。車を降りた瞬間に分かるくらい多くの蝶が飛んでいました。

タカサゴイチモンジ。深みのあるグラデーションが美しい大型種。大好き。
タイワンツノカナブン。角は男のロマンです。角のサイズは個体差が大きい。
ケバネカナブン。微毛に覆われた体はマットな赤色をしています。
ワタナベアゲハ。発達した赤紋が美しい。後翅に白紋が加わる貴重なメスも採れました。
オオベニモンアゲハ。細くとがった翅の形が印象的。
ルリモンアゲハ。お前に会いたかった。見づらいが後翅上部に鮮やかな瑠璃紋がある。
メスシロキチョウのオス。実はシロチョウの仲間。オスキシロチョウの方が良いんじゃ...?
タイワンモンキアゲハとルリモンアゲハの集団給水。標高を下げた川沿いにて。

 他にもキンミスジ、タイワンコムラサキ、日本でもおなじみアオスジアゲハ、ルリタテハ、スミナガシなども多くみられました。
 沢山採りすぎると後々展翅がたいへんなのでセーブするつもりだったのですが、見たことない蝶がたくさん飛んでいる光景にテンションが上がりっぱなしでこの日はやや採りすぎました。昼下がり、蝶も減り僕たちの疲労もピークに達したので撤収。16時ごろに宿に帰宅しました。

 宿に帰るとガイドさんたちが、自分たちが採った大量の蝶をなんとどさっと僕たちにくれました。「こ、こんなにいいんですか...?」と思いながらもありがたく頂戴し、部屋に帰ると山分けじゃんけん大会兼同定大会を開催。いかんせん分からない種類が多すぎたので、館長さんから借りた古い原色図鑑でひたすら勉強しました。
 
 この日の夜は館長さんが夜市に連れて行ってくれました。台湾の夜市と言えば一般の観光でも有名ですが、かなり規模が大きく、地元の人も多く来ています。普段は広大な空き地のスペースに、金曜土曜限定で大量の屋台、露店が結集し、日用品から飲食物、輪投げや射的、服や時計までとにかく様々な品が並びます。

夜市の様子。とにかく広くて驚いた。
夕飯。牡蠣入りかに玉、チャーハン、謎のとろとろスープ。皿をビニールで包むスタイル。

 ここで館長さんに夜ご飯をおごってもらった上に、お菓子やジュースや果物も買ってもらいました。まさに夏祭りに来てる感じでとても楽しかったです。
 お腹パンパンになるまで飲み食いした後帰宅し、軽く水銀灯を見たり、同定大会の続きをしたり、タトウを整理したりしてからこの日は0時ごろ就寝しました。


・3日目
 今日は間違えずに7時に起床。昨日と同じく畑を散歩してから8時に出発しました。朝ご飯は途中立ち寄ったコンビニで調達し、昨日とは違う場所に向かいます。

現地のコンビニシェアはセブン7割、ファミマ3割ほど。日本語の商品も多く並びます。

 また荒い山道を経て軽く車酔いしつつ、10時ごろに今日の採集地に到着。天気は前日に引き続き快晴、気温は32℃。昨日と同じような細い林道が続き、一番奥にあった背の高い花畑には各種アゲハがたくさんいました。

フタオチョウ。後翅後部の水色が涼しい。
昨日もいたが採り逃していたコノハチョウ。黄色い帯にブルーメタリック。かっこいい!
裏側は見事な枯れ葉模様だけどちょくちょく翅を開いちゃうお茶目な蝶。
ツマベニチョウ。シンプルかつ鮮やかな色使いが好き。
アカネシロチョウ。ミッキーカラー。表にもこの色があればいいのに...
タイワンツノカナブンの青色個体。基本緑だがたまに青いのがいる。青い+角=最強
ホッポエグリハナムグリ。展足途中ですいません。個性的なオレンジ模様が素晴らしい。

 この日は15時ごろまで採集したのですが、きつい日差しのもと歩き続けるのは流石に疲れ、帰りの車内では爆睡でした。宿に戻るとシャワーを浴び、館長さん宅で夕飯をご馳走になりました。

民家もターンテーブル付き!

 食事の際は中央に大皿を並べ、ご飯が盛られた一つの茶碗にとりながらおかずとご飯を一緒に食べていくスタイルのようです。スープが飲みたいときは一度茶碗内のものを食べきる必要がありますね。魚の骨などは直接テーブルの上に置いておき、最後にまとめて捨てます。

 夕食からしばらく後、いつものように同定大会をしていると館長さんに呼ばれ、行ってみると夜食にかき氷を買ってきてくれていました。かき氷といっても荒い氷にシロップがかかったあのスタイルではなく、もともと味が付いた密度高めフワフワ系の氷に数種類の蜜豆が乗っているスタイル。そしてなによりでかい。かなりお腹いっぱいになります。個人的には好きな味ですが飽きが来るのは否めない感じなのでお茶をお供に添えることをおススメします。
 その後は水銀灯でオオミズアオを一頭採り、3日目は終了。


・4日目
 この日は6時半に起きて朝シャワー。爽やかな朝です。

茶色い蛾に不釣り合いなシルバー。蛾の翅とは思えない。

 いつも通り8時に出発して町で朝食を食べてから、今日の採集地である川に向かいました。昨日までの林道と違い今日は川沿いの舗装路です。天気は晴れ時々曇り、気温は35℃。遮るものが何もない舗装路なのでこの猛暑はかなりこたえます。

ひたすらに暑い
ワンちゃんもきつそう

 採集中、もう一人のサークル員と一緒に2人で歩いていたらフタオチョウらしき蝶が見え、彼がダッシュで追いかけ始めました。僕は走る元気が無かったので走りゆく彼を見守っていたのですが、彼の前方には地元の少女二人と少年一人が歩いていました。彼らからすれば後ろから虫捕り網を持った青年が走り迫ってくるわけで、中々に怖い光景でしょう。事案的なものにならないかと心配していたら、彼は立ち止まり少女たちと何やら身振り手振りで会話し始めました。おいおい完全に不審者じゃないかと思い、他人のふりをしようと僕は網を置いたのですが、すぐに彼は再び走り始めました。色々気になるので彼の方へ向かったら、何かをネットインした模様。見てみると、お見事、ヒメフタオチョウでした。彼曰く、一度この蝶を見失ったものの、子どもたちがあちらへ飛んで行ったと教えてくれたそうです。そんなわけで地元の子どもの助けを得てのゲットという、彼にとっては思い出深い採集となりました。

思い出のヒメフタオチョウ。フタオチョウより筋状模様が細い。
ありがとう子どもたち!

 なお僕は前日フタオチョウを採っていたため、後に彼とフタオチョウとヒメフタオのどちらが素晴らしいかというあさましい議論を戦わせました。

パイナップルトラップにやってきたコノハチョウ。翅の後ろが破けてるが枯れ葉感は伝わるかな。
タイワンモンキアゲハ(手前)とオナシモンキアゲハ(奥)の吸水

 途中イナズマチョウらしき蝶も目撃したのですが採集はできませんでした。この日はちょうど日曜日で、川で遊びに地元の人々が多く集まっていました。おかげで車が頻繁に通りトラップや吸水ポイントになかなか蝶が溜まらず苦しい思いもしたのですが...。ここは周りの木が低いからかツマベニチョウがかなり低いところをたくさん飛んでいました。また、リュウキュウムラサキを多く見かけたのですが、去年与那国島で見たリュウムラと比べここのリュウムラは立派なサイズの個体が多くいたように感じました。
 
 この日も昼下がりに帰宅し、シャワーからの同定大会。夕飯は再び館長さん宅でいただき、夜食のかき氷もいただきました。


・5日目
 今日も7時に起床。疲れからか日に日に少しずつ朝がつらくなってきます。いつものように8時に出発し朝食を食べたら、今日は竹をメインとした山中の林道へ。天気は相変わらず晴れ、気温は33℃。天気の運はかなりいいようです。日頃から徳を積んでいる証拠でしょう。
 今日の採集地はオオルリモンアゲハのポイントです。オオルリモンアゲハはルリモンアゲハの台湾北部亜種で、瑠璃紋の形などにわずかに差があるとされています。オスでも性標があらわれないのもルリモンにはないオオルリモンの特徴です。ここは台湾中部ですがオオルリモンが多く生息するとのこと。

オオルリモンアゲハ。瑠璃紋が後翅の付け根に向かって突き出したような形をしている。
とても大きなアブ。翅がメタリックグリーンに輝き、一瞬すごい甲虫を見つけたかと思った。
かわいい

 話に聞いていた通りたくさんのオオルリモンアゲハが採れました。そして今日はやや早めに撤収。なぜなら今夜は山奥に灯火採集をしに行くのです。というわけでいったん宿に戻った後灯火採集の準備をして、夕方ごろいざ再出発。かなり標高の高い山奥まで車で走り、あと少しで灯火ポイント...というところで突然の停車。何事かと車を降りると、


 なんと道が崩れていました!下の土砂が流れて道が半分ほど浮いてしまっています。こりゃだめだな、ということで予定を変更しここで灯火採集をすることに。水銀灯を設置し夜を待ちます。

斜面には茶畑が広がっている。こんなところにも人が住んでいるのだなと感心。
今、人生で一番おうちから離れた場所にいる...。
日没。からの~
点灯!
最初の大きなお客さんはヒキガエル。貴様に良い虫はやらんぞ!
こいつはとにかくたっくさん飛来した。同時に20匹とかいた。結構でかい。
日没一時間ほどでハグルマヤママユが立て続けに三頭飛来。もっふもふ。鮮やか。
灯火から少し離れたところに現れたウスバカミキリの仲間。でかいよもちろん。
日没後二時間半ほどでオオミズアオが三頭やはり立て続けに飛来。

 他にはサビクワガタや、セスジオオクワガタことライヒヒラタクワガタのメスなんかが採れました。本来のポイントまで行けていればもっと採れたのかとも思ってしまいますが、色々採れたので満足の帰宅。
 明日はいよいよ採集最終日です。


・6日目
 朝、いつものように起きるとやけに暗い。また起きる時間を間違えたかと時計を見るとそうではないようです。窓を開けて外を見ると、がっつり曇ってました。小雨までぱらついています。実は今日は台湾特産の美麗種ホッポアゲハに挑戦するつもりだったのですが、ホッポのポイントは山の上なので残念ながらこれでは無理そうです。

ここは台湾。そう毎日うまくはいかない。

 館長さんたちとみんなで集まり作戦会議もとい朝のお茶会。すぐに天気は回復するが標高が高いところはやはり駄目そうとのこと。ホッポ見たかったなぁ...。

台風が来てるみたい。

畑のパイナップルトラップに来ていたクワガタをもらった。

 天気ばっかりはしかたがないので、今日は予定を変えて昨日と同じオオルリモンの林に行くことにしました。
 というわけでいつもより少し遅い時間に昨日のポイントに到着。天気はおおよそ回復し曇り時々晴れ、気温は31℃。
 
 
オオジョロウグモ。とにかく大きくて存在感がすごい。たくさんいた。
花掬いで複数とれた。ウスグロトラカミキリだろう。
花掬いで大量に網に入った。毛の束がパンクな感じになっている。
ベニモンシロチョウ。前述のアカネシロより白っぽく、黄色と赤の位置が逆。
イワカワシジミ。本日のラスト。

 この他にオオルリモンアゲハを追加したりコモンタイマイを採ったりして最終日終了。帰宅すると館長さんが高級烏龍茶をたくさんお土産にとくださいました。何から何まで本当にお優しい方だ...。
 そして今晩は館長さんの奥さんが屋台に連れて行ってくれるとのこと。最後の晩餐ということで館長さん一家みんなとご馳走を食べに行きます。

食材を選ぶスタイル。調理法はおまかせなのかな。
とても美味しかった。

 食材を選ぶショーケースの中には謎の食材もたくさん入っていました。好きなものを選べと言われたのでワタリガニとカエルをお願い。このほかにもアヒルや牡蠣、タコ、魚の刺身、チャーハン、炒め麺、肉野菜炒め諸々、スープなどなど大量の料理がテーブルに並びました。そしてこの日の料理はどれも、いつにもまして非常においしいものばかりでした。カエルはよく言う鶏肉に似た味というやつで、意外と臭みはありませんでした。ただ皮の感触はややカエル感があってちょっと...。
 とにかくたくさん食べまくり、動けなくなるくらい満腹になって台湾最後の夕食を終えました。

 宿に戻ると残っていた未同定種を全て同定し終えて、就寝。明日いよいよ台湾を発ちます。


・7日目
 最終日の朝は8時に起き、最後に畑を散策してから、館長さんに別れの挨拶をして一緒に記念撮影をしました。館長さん本当にお世話になりました。何から何まで世話をしてくださりとにかく優しい方でした。ホッポ採りに必ずまた来ます!

 人生初の海外採集はたくさんの見たことない虫に出会えたことはもちろん、現地でお世話になった方々、台湾の片田舎という初めての土地での生活も含めてとても新鮮で刺激的なものでした。日本の虫もまだまだまともに採っていない身で言うのもおこがましいですが、海外採集の醍醐味がなんとなくわかったように思います。今度はヨーロッパとかいいなぁ...。

臺灣、再見!

                          (文責:虫班員M)

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