2018年5月2日水曜日

八丈島新歓合宿〜虫班編〜

お久しぶりです、虫班です。
長らく活動の記事を更新できていませんでしたが、4月末に当サークルの新歓の目玉である八丈島合宿を行ったので、久しぶりに採集記を書こうと思います。

毎年恒例のこの合宿ですが、僕は去年この合宿をサボって北海道にオサムシを採りに行ったので、新入生として参加した一昨年の合宿以来初めての参加でした。

合宿の日程は4日間ですが、夜出発で片道10時間のフェリー移動なので実質活動できるのは2日間。


というわけで早速フェリーに乗り、いざ久しぶりの離島へ。


夜に竹芝桟橋を出発し、一晩中波に揺られて翌朝に八丈島に到着する予定です。
出港後しばらくはみんなで甲板に出てベイエリアの夜景を眺めます。が、相当風が強く肌寒いのでみんな早々に船室に撤収。

荷物に埋もれて寝ます



〜活動1日目〜

翌朝、起床して甲板に上がると、二つの山で構成された特徴的な島影が見えました。あれが今回の目的地の八丈島です。八丈島はあのひょっこりひょうたん島のモデルとも言われているそうです。僕がギリギリ記憶にあるレベルなので、新入生は知らないかも。

右に見えるのは八丈小島

合宿中は、港近くのキャンプ場でテント泊です。島に着いたらみんなでキャンプ場まで荷物を運びテント設営。設営を終えると早速班ごとに分かれて活動に出発します。

虫班の主な狙いは、ハチジョウカラスアゲハと八丈特産の各種クワガタです。
まずはみんなで蝶採集に出かけます。島唯一のスーパーらしいスーパーで昼飯を調達し、車で移動。去年は天気に恵まれず全然蝶が採れなかったそうですが、今日は素晴らしい蝶採集日和です。車を走らせている間も、道路上を飛んでいるハチジョウカラスアゲハを多く見かけました。あとキジも見かけたのですが、警戒心が薄いのか車でかなり近くを通っても逃げませんでした。

ポイントに到着し、みんなで網を持って採集開始。虫捕りが初めての新入生もいるので色々教えながら道を歩いていきます。



写真の通り素晴らしいコンディションで、蝶の数も去年とは比べものにならないほど多いです。しかし見えるのと採れるのは別の話。薮の向こうに飛んで行ったり上空に舞い上がったりと自由自在な蝶にみんな翻弄されます。
新入生にやり方を見せなきゃということで、みんなの前でネットイン。

ハチジョウカラスアゲハ

本土のカラスアゲハに対し、八丈島亜種という扱いになっています。本土産より後翅の青みが強いと言われています。
ハチカラを探して歩いていると、時々ハチカラの深い青とは違う爽やかな水色のアゲハが素早く飛んでいきます。

アオスジアゲハ

こちらは八丈特産というわけではないですが、本土のものより斑紋異常型が出やすいことが特徴です。今回見られたのはエサキ型という斑紋異常で、前翅の青筋の中ほど前縁よりに通常は存在しない青紋が発生します。上の写真の個体も、かすかですがエサキ型の紋が出ています。しかしアオスジは他の蝶に比べて高いところを速く飛ぶので、なかなか捕まえられません。
ハチジョウカラスアゲハとアオスジアゲハの他には、ナミアゲハやアカタテハ、シジミチョウ類も多く見かけました。蝶以外では、他の班員が道に落ちていたリュウキュウツヤハナムグリを拾っていました。あと、蝶を探していたら林縁の梢に大きな甲虫が飛来したのが見えたので、網ですくってみたらなんとクロカタビロオサムシでした。
また、蝶を探して歩いていると、道をダッシュで横切るニホンイタチを何度も見かけました。かなり数が多いようでしたが、調べたところ昔ネズミ駆除のために島に放されたそうです。

キャンプ場付近で見かけたニホンイタチ

13時ごろ、みんな疲れ果てたところで蝶採集を切り上げて、良い景色を見ながらお昼ご飯を食べました。新入生のみんなも蝶採集に満足できたようです。

休憩を挟んだら午後はクワガタ採集へ。またしばらく車を走らせて、Googleマップで目星をつけていた森に到着。朽木の材割り採集なので新入生にやらせるにはちょっと地味ですが仕方ない。
森に入れる所を探しながら道を歩き始めてすぐ、近くにあった細い木の奥が少し入れそうだったので覗き込んでみました。するとその木の裏側が浅いウロになっていて、黒光りする甲虫が奥で動いるのを発見。クロカタビロかなと思いながらすぐに掴んで取り出すと、なんとこれがノコギリクワガタでした。

ハチジョウノコギリクワガタ

ハチジョウノコギリクワガタは本土のノコギリクワガタと比べるとかなり小さい個体がほとんどです。また、本土のノコギリは赤茶がかった色をしていますが、ハチジョウノコは真っ黒になります。かっこいい。
しかし材割り採集をしようとしていたのにまさか活動中とは。
活動しているなら、ということで同じ木の根元の落ち葉と土を軽く掘ると、もう2匹同じくらいの大きさのオスが出てきました。

どうやって探せば良いのかよく分からなくなってしまいましたが、とりあえず材割りもやってみます。
しばらく森に入れる場所があまり見つからなかったのですが、なんとか森に降りられる場所でいくつか材を割ってみると、今度は新入生がコクワガタの方を出しました。

ハチジョウコクワガタ

こちらは立派なサイズ。本土のコクワが黒いのに対し、ハチジョウコクワは赤茶がかっています。ハチジョウノコと逆ですね。もう一匹やや小型のオスが出ましたが他はイマイチ。他の新入生も朽木割りは飽きてそうだったのでここで終了。

その後、八丈島の観光スポットである黒砂砂丘に登ってみました。

島側

海側

切り立った岸壁の上に黒い砂利の急斜面が広がる絶景でした。
1日目の日中の活動はこれで終わりにして、長い船旅と採集の疲れを癒すべく銭湯へ。露天風呂からは広大な太平洋が見えました。

海に沈む夕日を眺める

キャンプに帰ると夕飯作り。メニューはカレーうどんと水班が釣ってきた魚を使った料理。新入生と現役みんなで楽しく作っていました。

新鮮な刺身。とても美味しかったです。

食後は軽くナイター活動ということで再び車を走らせて林道に向かい、歩いているクワガタを探してみました。しかし見つかるのは大量のアマミサソリモドキばかり。オオゲジとアシダカグモも見られて奇虫祭りでした。

アマミサソリモドキ

結局、かろうじてハチジョウコクワのメスが1匹見つかったのみでこの日は撤収。テントで眠りにつきました。



〜活動2日目〜

7時くらいに起床。夜はやや寒くて時々起きてしまいました。朝ごはん代わりに飲んだあら汁が体にしみました。

今日は1日中クワガタを掘り続ける修行チームと、昨日と同じく昼まで蝶を採り午後は緩めに活動するエンジョイチームに分かれます。僕はもちろん後者です。修行チームは僕らが起きた頃に早速出かけて行きました。

今日はまず、昨日とは違う場所に行ってみます。まだ朝早いせいか道中蝶は飛んでいません。目的の林道に到着し、しばらく歩き回ったものの、あまり蝶がいません。ハチジョウカラスアゲハを少しだけ見かけましたが、何やら微妙な感じです。まだ気温が低いのか、それとも場所が悪いのか。
適当に歩き回っていたら、山にトンネルが掘られているのを発見しました。

覗き込んだらこんな感じ

おそらく戦時中に防空壕として掘られたものと思います。八丈島は、地上戦は起こっていないものの、戦争末期には防衛拠点として多くの日本兵が配備されたそうです。

結局蝶はあまり見られず、2日目から虫班にきてくれている新入生もいるということもあるので早めに昨日のポイントへ移動。

今日も好天に恵まれて気温もどんどん上がり、ポイントに着く頃には昨日と同じく多くの蝶が飛んでいました。
ハチジョウカラスアゲハのメスも多く見られ、新入生たちも採れていました。

ハチジョウカラスアゲハのメス

メスの方が発生が遅いので完品が多いです。メスを採っていた人曰く、スレが少ないせいか緑色が強い、とのことでした。新入生や後輩が採ったメスを見せてもらいましたが、確かに緑が強めでスレが少なかったです。一方僕がネットインしたハチジョウカラスアゲハは1匹残らず全てオスでした。僕は、せっかくハチジョウカラスアゲハなんだから青い方がいいと信じています。

後半はさすがに蝶を追う気力が失せて、イタチを追ったりしていました。新入生も満足した様子だったので、お昼を食べて一旦市街地へ。

その後は特に採集はせず、昨日とは別のメンバーを連れてまた黒砂砂丘に登ったりしました。砂丘の頂上は高山のような植物相でしたが、枯れ木をひっくり返したら砂に埋もれたハチジョウコクワのメスが見つかって少し驚きました。

夕方雨がぱらついたので早めに活動は終了し、昨日の銭湯へ。風呂上がりにロビーでゆっくりしていたら突然大雨が降ってきました。さすが亜熱帯気候。ずっとクワガタを掘っていた修行チームも同じタイミングで銭湯にやってきて、虫班みんなでロビーで雨を眺めながらダラダラしていました。みんなさすがに疲れた様子でグッタリ。修行チームの方もたくさん採れたようです。新入生には中々ハードだったと思いますが、楽しめたのではないでしょうか。

銭湯のロビーで見つけた、個人的に面白かった張り紙。
旧日本軍の拳銃がまだ民家に眠っているようです。

夕飯はみんな集まって宴会。島の料理が美味しかったです。未成年やドライバーが多いのでアルコールはほとんど無しでしたが、なぜか酔ったようなテンションの人が多くて楽しかったです。

そして最終夜はナイター活動へ。虫班はいつもの灯火採集に行きます。風は弱く夕方の雨で湿度は高め、ただ一点の問題は煌煌と島を照らすまばゆい満月。さっきまで厚い雨雲が広がっていたと思ったら、いつのまにか雲は完全に晴れていました。
非常に厳しい状況ですがとりあえず二手に分かれてそれぞれ灯火ポイントに向かいます。

ポイントについて早速白幕を広げてライトを点灯。しばらく散歩したりして待ちましたが、、、
全く大きい虫が来ない。

大型蛾はおろか中型蛾もほとんど来ません。違う場所で灯火を焚いたグループもダメなようで、灯火は諦めて街灯を見回って帰ることにしました。
しかし街灯も全然虫が飛んでいない。

かろうじて見つけたアカハライモリ。八丈島産は赤紋の発達が強い。

走る車の助手席から路面を眺めながら、もうダメかなぁと思っていたその時、白い三角形の物体が落ちているのが一瞬でしたが見えました。
車を止めてもらい、走って確認に戻ると、そこには想像通りの姿が。

オナガミズアオ

オオミズアオとよく似ており、本土だとこちらはレアですが、八丈島にはオナガミズアオしかいません。どこが違うかと言われると、正直よく分からないですねこれ。色々判別ポイントは言われますが、あまり明瞭ではないです。実は昨晩キャンプ場の目の前に一匹いたのですが、今晩もなんとか見れました。
これは自慢してやろう、ということでもう一方のグループに写真を送りつけてキャンプ場へ帰投。先ほどの写真に返信が来ていたので見てみると、たくさんのオナガミズアオとシンジュサンを手に笑顔を浮かべる彼らの写真が送られてきていました。うっそだろお前…。
まさかの特大カウンターをくらい、悔しさに震えながら八丈島最後の眠りにつきました。




翌朝はあまりの暑さに目を覚まし、予定より早めにテントを撤収しました。そして集合写真撮ったりお土産買ったりしてから帰りのフェリーへ。また10時間波に揺られて本土に帰ります。

ベイエリアの夜景と満月

陸に上がってしばらくは、頭がグラグラ揺れているような感覚でした。
自分はもう八丈島に行くことはないかもしれませんが、新入生のみんなが生物同好会に入って、来年再来年に次の新入生を八丈島に連れて行ってあげてくれたらいいなと思います。
(文責:幹事長)